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機械工学科棟校舎改修 機械工学科主任 矢尾匡永

2009年3月4日
学生共同実験室
実験室
コンピュータデザイン演習室
 「機械工学科においては, 機械の設計・製作および管理に関する基礎知識と技術を身につけて, それらの分野における総合的判断力・企画力・豊富な独創力および指導力を備え, 現代の工業技術の急テンポな動きに即応できる機械技術者の育成を目標としている.」 とは,昭和39年 (1964) に開校した当時の奈良高専の機械工学科の教育方針であった. この教育方針の下,昭和42年 (1967) 3月15日に機械工学科棟が竣工した. 当時,機械工学科には1学年およそ80名 (2クラス) の学生が在籍し, 専門科目担当教員が20名いた. 竣工当時から機械工学科棟には,現在の学科定員の約2倍の数の学生と教員を入れ, 十分なスペースを取るための配慮がなされている. 機械工学科棟には一部を除いて内廊下を作らず, 各部屋を接続する校舎北側の外廊下は幅の広いベランダとひさしの位置づけとし, その浮かせた設置面積を2クラス一度に授業することのできる大教室・大型の実験設備を入れ実践的な教育を重視した大きな実験室・学生が常に利用できる二つの大きな製図室などに有効に利用した. このため,どこが機械工学科棟の入口か判り難く来訪者が戸惑うこともあるが, 使い慣れた学生や教員にとってはゆったり利用できるように工夫され 機能的に優れた建物であったと言える.

耐震補強

外廊下

 高等専門学校設置基準の改正 (卒業に必要な取得単位数の改定), 機械工学科2クラスから機械工学科・電子制御工学科への分離改組, 専攻科設置,高専機構の独立行政法人化ならびにJABEE受審などの出来事と 竣工から40年という時を経て,既に本館棟・一般教科棟・電気工学科棟は校舎改修され, 平成19年 (2007) 当時,機械工学科棟と工場は学内で最も古い建物になっていた. その年,耐震補強と老朽化解消を目的に, 機械工学科棟校舎改修が国立高専機構本部より内示された. 平成20年 (2008) の改修工事を前に, 機械工学科では岩井教員をチーフに酒井教員・谷口教員からなる改修計画チームを設け, このチームを中心に機械工学科教職員全員で, 校舎改修案作成,学科移転計画立案,改修前後の実施カリキュラムの計画・調整, 新規導入設備の計画立案など多岐にわたる仕事を精力的に行って頂いた. 特に,校舎改修案作成にあたっては, 現在の機械工学科の教育目標 ((1) 機械の設計・製作に関する基礎知識と技術を身につける. (2) 創造性を育成する. (3) 幅広い視野を有する社会貢献型の機械技術者を育成する.) を施設・設備面で具現化することに配慮しつつ, 共用スペースの設置などの昨今のトレンドを考慮した. 校舎改修は平成21年3月 (2009) に完了した.
 校舎改修後の機械工学科棟の特徴を以下に紹介する. (1) 実践的な創造性教育のための広い実験室を確保する目的で, 機械工学科棟竣工時と同様,内廊下とはせずに外廊下を採用した. できる限り教員研究室の横に各々の実験室を配置し, 教員研究室と実験室のアクセスを便利にした. 教員研究室の北側に新たに学生共同実験室を設け, 教員と学生あるいは研究室の枠を超えた学生相互のコミュニケーションを容易にするよう配慮した. (2) 進路指導室や多目的室を確保し, 機械工学科のキャリア教育に関する資料をまとめ, 就職・進学に係わる学生だけでなく, 低学年の学生や保護者の方に開かれた資料室とすることを心がけた. (3) 教室・研究室・学生共同実験室など機械工学科棟の全ての部屋のドアおよび窓は 大きな開口面積を有する2重ガラスとし, 省エネルギーのための高い断熱性を確保するとともに, 学内で最も明るくてオープンな空間となるよう工夫した. (4) 実験装置の小型高性能化や一回り小さな製図板の採用で 実験室や製図室を少しコンパクトにして設置面積を浮かせた. その面積を1階東側に配置された 保健室・カウンセリングルーム・コミュニケーションルーム といった学生のための共用スペースに利用し,学生相談室機能の強化に貢献した.
 最後になったが, 学科移転に伴ってお手伝い頂いた平成20年度機械工学科卒業の学生諸君, 本校総務課施設係・契約係の方々に, 移転中に合同教室・大講義室・多目的室を提供頂いた関係者の皆様に, 岩井教員らの改修計画チームを中心とした機械工学科教職員と国立高専機構本部にこの紙面をお借りして深くお礼申し上げたい.
本文は本校広報誌CAMPUS 2009 Summer号に掲載. 写真は2009年7月撮影.