元全日本選抜チーム主将 筒井大助氏来校!! (Jan/31/2002)

 筒井大助氏(住友金属工業)が2002年1月31日に来校され, 機械工学科にて「製造業と企業スポーツ」について講演されました. その後グラウンドで硬式野球部員に熱いメッセージをいただきました. 野球部員を前に語る筒井大助氏

筒井流・生きるヒント
機械工学科4年 硬式野球部 中森 聡子

本校広報誌 CAMPUS 2002 Spring号より

 あれは数週間前. 教室に貼り出された一枚の新聞記事ととある通知に,私は胸を躍らせた. ものすごい人物が機械工学科に講演をしにやってくる! その人物とは,私がかねてから一度お会いしてみたいと思っていた方の一人だったのだ. 住友金属にお勤めで,元住友金属野球団の監督をされていた筒井大助氏. 野球部のマネージャーをしている私は,低学年の頃より, 監督の野々垣先生から筒井氏のことをよく聞いており, 実際にお会いしてお話をしてみたいなどと密かに思っていた. だから何度も教室の掲示板の前に立ち,筒井氏のインタビュー記事を読み返していた.
 そしてあっという間にその講演会の日はやってきた. テーマは,「製造業と企業スポーツ」について. 初の機械工学科全学年の合同で行われる講演会に, 会場はいつになくどよめいていた. 私がふと自分の椅子の下に目をやった次の瞬間,どよめきはピタリと静まった. あわてて顔を上げると,すでに筒井氏が入ってきておられ,スタンバイされていた. それからのおよそ一時間の間,とても歯切れのよい気持ちのよいテンポで, 筒井氏のお話は進んでいった. 野々垣先生と共に,小学生時代の尼崎北リトルリーグ, 中学の野球部と歩んでこられたこと, 高校では受験勉強のために一度野球をやめ, 関西学院大学の野球部で再び野球を始められたこと, その後住友金属に入社され, 社会人野球で活躍されていたこと, 全日本代表に選ばれキャプテンを務められていたこと, 果ては住友金属野球団の監督をされていたことなどなど, 筒井氏のこれまでの野球人生を中心とした内容だった. ソウルオリンピックでは見事銀メダルを獲得されたのである. 現在プロ野球界で活躍している有名選手(例えば大リーグで大活躍中の野茂選手,ヤクルトスワローズの古田名捕手)の名前が出てきたりもし, 皆,一分たりとも飽きることなく耳を傾けた.
 しかし,私たちに熱心に話を聴かせたのは, 筒井氏の話しぶりや興味深い選手たちの話題のせいだけではない. それは,ところどころに,私たちへの生きるヒントが織りまぜられていたからである. 今後,何かしたいことがあるならば,そのことを実行するためには, 今,何をしなければならないか. 筒井氏は昔からそのようなことを冷静に考えることができ,実行されてきたという. その結果,数々の成功を収められてきた. そう,したいことが決まれば,あれこれ悩んでいる場合ではないのだ. そして,私が筒井氏のことを最も素晴らしく思うのは, 何よりも人とのつながりを大切にされていること. 講演中,何度も「人間関係」,「縁」という言葉を口にされていた. 苦しい練習に耐え抜いて得た勝利,メダルよりも,その間の人との出会い,人との縁との方が,自分にとっては財産だとおっしゃっていた. いつの時代も,どんなに産業が発達しようとも環境が変化しようとも, 人間が心をもたぬ日は来ない. 皆が各々違う心をもっていれば,必ずそこには人間関係が生まれる. そこで素直に人の心を受け入れられるようにしていると, 自然に良い指導者が現れ,自分を導いてくれる. また,自分についてくる者も現れる. 筒井氏がこの講演会で皆に伝えて下さった生きるヒントを, 私はこのように解釈している.
 筒井氏は講演後,硬式野球部の指導にも来てくださった. 講演会では残念ながら後ろの方の席に座っていた私は, 思っていたより身体が大きく貫禄のある筒井氏を目前にして圧倒されてしまった. 身体を鍛えるだけではなく,頭を使うことも野球には必要なことや, チームワークをよりよくしていくことが大切など, 貴重なお話をたくさんしてくださった. 選手たちはいつも以上に真剣な面持ちで練習に取り組み,アドバイスを受けていた. 私は選手たちに,筒井氏の野球に関する技術だけではなく,一人の人間としての偉大な考え方,生き方までをも盗み取り,もっともっと成長していってほしい. そして私は,今後数えきれぬほどの挫折や失望に立ち向かわねばならないであろう自分の人生の中で, この講演会のこと,筒井氏の教訓を思い出し,人間も悪くないなぁなんて一人ボソッとつぶやいたりするのだろうと考えたりする.